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媼の存在 

『竹取物語』の翁は脇役というより、主役の相手役のような気がしますし、ひょっとすると彼こそが主役なのではないかとさえ思います。そもそもタイトルロールは彼なのですから。
もともと『万葉集』に竹取翁が美しい女性たちと出会って歌を詠んだという例があり、「竹取翁が美しい女性に出会う」という点では共通しています。あくまで翁と娘の話なのですね。
『竹取物語』でも、当然ながら求婚者は全員男ですから、彼らと直接やりとりをするのは翁です。媼はほとんど姿を見せません。帝の使いとして女官が来たときは女性同士というので媼にも出番はあるのですが。
しかし江戸時代の『竹取物語』の絵巻物や絵本を見ると、翁と媼がどちらも同じように描かれていると言えそうです。
さらに現代の絵本や紙芝居などになりますと、「むかしむかし、おじいさんとおばあさんがありました」という昔話風になって、

    翁と媼は対等

に近づきます。いわば現代の家族関係を反映して媼(母親の役割)の存在が大きな意味を持つようになるのです。
市川崑監督の映画『竹取物語』で媼を演じたのは若尾文子さんでした。翁は三船敏郎さんで、よぼよぼとした夫婦ではなく、たくましい翁と美しい媼だったのです。若尾さんの媼は娘(おかや)を亡くして気弱になったところがあり、その亡き娘の面影をかぐや姫に求めていました。母性豊かな媼で、やはり映画の中での役割は大きかったのです。
翻って高畑勲監督『かぐや姫の物語』では、媼はさらに積極的な役割を持っていたと思います。
しっかり者で、翁をやり込めることも多く、常にかぐや姫の味方をする人でした。翁は、娘の幸せは都で高貴な男性と結婚することだと考えていて、それは『竹取物語』の翁にも通じます。しかも自分の出世もやはり期待していて、帝が官位を与えようと言ったときは有頂天になっていました。言ってみれば男の論理、現代でいうなら、安定した仕事を持っている

    高学歴、高収入

の男性を求める父親像に当たるように思います。
それに対して、媼はかぐや姫の名づけの祝いのときに姫が「山のみんなも呼びたい」と言ったのに対して「それもいいかもしれない」と賛成します。翁が断固として否定しますが、このあたりもとても現代的な母親像だと感じます。
翁が帝からの申し入れにのぼせ上っている時も、「いいかげんにしてください」とくぎを刺していましたし、月に帰ることを告白した時、かぐや姫を一度山に返してやるのも媼でした。慈愛にあふれた、「ほんとうの愛」を求めるかぐや姫を理解する存在だったのです。
媼の声は宮本信子さんでしたが、実はこの映画全体のナレーションも宮本さんがなさっているようです。これは案外大事なことかもしれません。媼の視点で物語は始まり、進行役、つまり舞台回しも媼の役割と見ることが可能だと思うからです。『竹取(翁)物語』ではなく『かぐや姫の物語』です。時として翁は媼の手のひらの上で踊っているだけのようにも見えるのです。

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コメント

主役を捨てて、実を取る

あ、決して批判しているわけではございません。

ナレーションは軸になると陰の主役と申したいだけです。
ナレーションの大切さを学んだのは。

朝ドラ(15分枠)という、未知の世界に、毎日付き合えた時です。

※TVをご覧にならないセンセには未知の領域かと存じますが。

学生時代に風邪で休むか?OL時代にサボる時しか、観たことがない。
謎の15分ドラマだったのですが・・

主婦という職業になり、
ニュースの後に、何となく音声だけで聞いている(これでも朝は忙しい)、
朝ドラを見続ける苦労も知りました。

一年間、半年も見続けるって、結構、辛いものです。

が、ラストまで、何とか完走できた時。
ああ、ナレーションこそが、ドラマの軸なのだと実感いたしました。

違和感がある主役、ヒロインであろうと、脚本の意図が読み取れなくても。
ナレーションの人選で、
ものがたり、作品の世界を総じて教えてくれているのだと、学ばせてもらいました。

そうそう、伊丹夫人はトーク番組でも、チャーミングで朗らかな女優さんですが。
声だけになると、圧倒的な重厚感を醸しだされます。
威厳というのかな?
温かみがあるけれども厳しさが有るというか。

あの映画でも、
母親(祖母?)役であり、かぐや様のお世話係でもあり、時に。
若い娘に甘々な夫への厳しさもあり。
美貌を武器に高貴な男を翻弄していることを、わがままと決め付けない寛容さ。

自分の理想に押し込めずに、好きにさせて慈しむって、難しい役どころですよね。

更に客観的なナレーション。
市川監督は、この人に全てを託したのだろうと思ってしまいます。

宮本さんのナレーションは、
石坂浩二(初恋の俳優さん)と同じくらい、素晴らしいと思います。

  • [2023/09/01 20:49]
  • URL |
  • 知的な声が欲しい・押しego。
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

宣言はどこへ行った・・

宣言と願いの、翌日に・・
この長文のコメントの不始末。。
申し訳ございませんでした。

  • [2023/09/01 21:24]
  • URL |
  • どの口が言うたのだろう・押しego。
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

🎵押しegoさん

おかげさまで無事八月いっぱい締切の仕事ができました。
いつも押しegoさんのコメントは楽しみにしています。
伊丹十三というのは阪急電車と関係ありそうな芸名ですが、元はご尊父の伊丹と小林一三の名前が由来で伊丹一三だったそうですね。でも、小林一三由来ならやっぱり阪急(笑)。一はマイマスなので十というプラスにしたとか。優れた、しかし変わった人でした。亡くなったのはまだ若かったですね。

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