fc2ブログ

久しぶりの浄瑠璃 

私はなかなか筆が進まず、書き物がいつも締め切り間際になってしまいます。
浄瑠璃に関して、遅筆になるひとつの理由は、時代背景、その土地の様子などを出来るだけ調べてからでないと書けないから、ということがあります。本所七不思議につきましても、古地図を観たり、現地の案内板を見たり、言い伝えについて調べたり、といろいろすることがあります。しかしそれでも遅すぎるのは自覚しています。ただ、筆が動き出すと、ある程度のスピードが出てきます。そして、締め切りという壁があるとさらに進むのです(笑)。
2021年の暮れに、初めて山口県防府市から山口市徳地に足を踏み入れました。防府は防府天満宮で知られますし、

    種田山頭火

の出身地としても有名です。しかし私が関心を持ったのは周防国の国衙跡、阿弥陀寺、三田尻港、佐波川などでした。もちろん天満宮にも山頭火のゆかりの地にも行きましたけどね。
そして徳地(防府から北に行った佐波川沿いの盆地)では東大寺再建に大きな役割を果たして俊乗房重源にまつわる遺跡を巡り、当地の人形浄瑠璃で用いられる「串人形」も

    徳地人形浄瑠璃保存会

の方に見せていただきました。
それもこれも、重源上人を主人公にした創作浄瑠璃を書くためでした。
さらに昨年もその人形による『傾城阿波の鳴門』の上演があると聴いて飛んで行きました。
これらすべてに触発されて、浄瑠璃を書くことにしたのです。題して『重源上人徳地功(ちょうげんしょうにんとくじのいさおし)』。
重源の弟子の蓮花坊という人物が材木を組んだ筏で佐波川を下るとき、岩に当たって淵に沈んだという話が伝わっています。それをもとに、土地の娘の蓮花坊へのあこがれと、僧として恋愛に踏み込めないのにその禁を犯してしまう蓮花坊の話に仕立てました。蓮花坊さんの名誉を傷つけるつもりはさらさらないのです。ごめんなさい。この作品では少し新しい試みをしてみました。わかっていただけるかどうかかなり微妙なところで、自己満足に終わってしまうかもしれません。
『古今和歌集』秋上・僧正遍照の歌に
  名にめでて折れるばかりぞ女郎花
   我おちにきと人に語るな
(女郎花という名に惹かれて折っただけだ。
私が堕落したなんて人に言うではないぞ)
があります。僧である自分が「女」を折った(女性と関係を持った)なんていわないでくれよ、とふざけたような一首です。それを借りて、「御馬の里」(ごもうのさと)の段」を深刻な話にしてみました。そのあと重源が筏に乗って川を下る「道行筏飛沫」(みちゆきいかだのしぶき)が付きます。よそ者にとって「御馬」という地名はとても「ごもう」とは読めませんが、地名は概してそんなものですね。当地では子どもたちにこの芸能を伝承する試みがなされていますので、道行は子どもさんに語っていただけるように短めにしました。ただし、言葉はあえて難しくしておきました。これには意見がいろいろある(現代人にわかるように書くべきだという意見もあるでしょう)と思うのですが、私は浄瑠璃の独特の韻律を伝えたくてこのようにしています。
この作品を先月末にかろうじて仕上げ、少し補足したうえで徳地人形浄瑠璃保存会の方にお送りしました。
ただ、浄瑠璃ですから、文章だけではどうにもなりません。作曲、お手本の語り、三味線の演奏が必要です。こうなると、どうしても予算が必要です。保存会とて一般の方の集まりですからそんな予算はありません。ここは何とか自治体の文化予算を割いていただけないものかと願ってやまないのです。
とりあえず、この夏の宿題は何とか終えることができました。

にほんブログ村 演劇・ダンスブログへ
にほんブログ村
↑応援お願いします
jyorurisakushaをフォローしましょう

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tohjurou.blog55.fc2.com/tb.php/6582-5d7fa852