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「アレ」という表現 

プロ野球阪神タイガーズの岡田監督が「優勝を目指す」という代わりに「アレ」という言葉を使って「優勝」を表現したのは関西人らしい技巧でした。昨日も書きましたが「アレ」というのはとても漠然とした言い方ですが、だからこそ野球チームという集団が心の内に秘める決意としてはよかったのだと思います。言葉としては「アレ」としか言わず、しかし誰もが優勝を意識している。監督の思う壺というべきでしょう。
高齢のご夫婦などが「アレ、どうなった?」「まだですよ」「あ、そう、頼むよ、アレ、そんなに急がないから」というだけで意思の疎通が完成することがあるようです。「アレ」というだけでお互いの心に同じものが思い浮かぶことが前提になって会話が成り立つのですね。
落語のマクラで

    「どうも」

というだけで会話が成り立つ、というのがあります。二人の人物が出会います。
「どうも」
「あ、どうも」
「どうも、どうも」
「いやぁ、どうも、ハッハッハ」
「ほたら、どうも」
「どうも」
とだけ言って別れるというのです。もちろん実際にはここまで極端なことはありませんが、会話の言葉というのは時として具体的でなくてもよい、あるいは具体的でない方がうまくいくのだろうと思います。そういう我々の日常をうまく捉えたマクラだと思います。
私は最近しょっちゅう

    物忘れ

をするようになったのですが、そんなとき「えーっと、アレ、あのう、アレ、えっと」とぶつぶつ言っていると親しい人が「○○のこと?」と助け船を出してくれることがあります。そんなとき、単に忘れ物を思い出しただけではない、「わかってもらえた」という、喜びが感じられることがあります。
岡田さんの場合は、忘れたのではなく、むしろ逆に明らか過ぎるほど明らかな「優勝」ということばを徹底的にぼかすことによって「仲間内」にだけわかる隠語のような意味を持たせました。そうすることで関西の野球ファンの心をつかんで「アレ」と言うだけでその意味を理解する人、「優勝」なんてあからさまなことを言わずに「アレ」でわかる人は誰もが仲間だ、という意識を芽生えさせることに成功したのだと思います。甲子園球場のファンの中には「アレM5」などという摩訶不思議なフリップを持っている人もいました。つまり「アレ(優勝)までのマジックナンバー5」という意味です。テレビカメラも黙ってはいませんから、盛んにそういう人たちを映していました。
「アレ」はちょっとした魔法の言葉と言えるかもしれません。

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