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お歯黒 

昔の人の習慣には不思議なものがあります。江戸時代の女性は既婚者と未婚者で外見を変えました。結婚すると歯を黒く染め、眉を落としました。あのお歯黒(鉄漿)というのは、今から見ると不気味ですらありますが、あれを付けることによってやんちゃな娘ではない、おっとりとした大人の女性を感じさせる意味があったようです。
文楽人形でも、「娘」首の人形は眉がくっきりして白い歯が覗いていますが、「老女形」になると眉は青く剃りあとが見えて口もとも白くありません。
今ではまずお歯黒をする人はまずいませんが、祇園では舞妓さんが襟替え(芸妓になって白衿にする)をして芸妓になるときにしばらくお歯黒をします。不思議なことに、芸妓さんがお歯黒をしていても気味が悪いという感じはしません。さすがは芸の人だと思います。
酢酸鉄を歯につけて、タンニンを多く含む

    五倍子粉(ふしこ)

を塗ることで定着させたようです。成人の証であり、一方で虫歯を防ぐ効果もあったとされます。私は化学が大の苦手ですので、タンニンが酢酸第一鉄と結びついて黒くなってしかも定着すると言われても、理屈についてはよくわかりません。
鉄を用いる方法は中国から伝わったもので、鑑真和上が伝えたとも言われます。
平安時代の貴族はやはり眉を落としてお歯黒も男女ともに成人の儀式で用いました。
映画『かぐやひめの物語』では、教育係の相模という女房が眉を抜こうと姫に迫ります。すると姫は「眉がないと汗が目に入る」「歯が黒いと笑えない」といって拒否します。人間が生きていくうえで汗を流し、笑うのはどちらも重要なこと。それを不可能にするような「成人の儀式」などくだらない、というわけです。
汗を流して友だちと笑い合った

    山での生活

を否定されるのも同然です。
姫は「なよたけのかぐや姫」と名付けられたのですが、その祝宴においてひどい疎外感を覚えたうえに侮蔑を受けて山に逃げます。しかし山はすでに変わり果てて捨丸たちもいませんでした。かぐや姫は炭焼きの老人(この老人、わずかな場面の実に乙上する、言わばチョイ役ですが、声は仲代達也氏。にこりともしない重い人物です)に山は死んだのではなく、今はじっと我慢をしてやがて巡ってくる春を待つのだと教わります。夢だったのか、うつつだったのか、ふと気づくとかぐや姫は都にいます。そして眉を抜き、歯を染める決意をするのです。
なお、やはり映画としては見栄えが大事ですので、その後のかぐや姫は相変わらず白い歯で登場します。このあたりは「映画のうそ」として許容されることだと思います。

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