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中途半端な者は 

『源氏物語』「帚木」巻はその大半が雨夜の品定めと言われる、若い男たちによる女性談義が占めています。
光源氏以外の男が体験談を話すのですが、そのあとに左馬頭という人物が全体のまとめのような話をします。

1 中途半端な者は男女を問わず、ちょっとした知識をひけらかそうとする
2 女性が三史五経を学ぶのはかわいげがないが、女でも世間のことについて知らないわけにはいかない
3 特に勉強しなくても少しでも才気のある人なら知識に触れることはあるだろう
4 漢字をさらさらと書いて女同士の手紙に書きたてるのは残念なことだ。こういう女性は上臈にも多い
5 自分が一人前の歌人だと思っている人が古い歌を取り入れて場違いな時に歌を詠みかけてくるのはうんざりする
6 何ごとも、時と場合を考えずに風流ぶったりしない方が無難で、自分の知っていることも知らないふりをするくらいがよい

2つ目に書かれている

    「三史五経」

というのは『史記』『漢書』『後漢書』のことで、要するに古代中国史です。「五経」は『詩経』『書経』『易経』『礼記』『春秋』で、こちらは「四書五経」という言葉でおなじみだろうと思います。これらは大学寮という学問を伝授する場での教科でした。女性がこんなことを学ぶのはかわいげがない、と言っているわけです。
現代の女性がこれを聞いたら、「何と勝手なことを!」とお怒りになると思います。でも、私が高校生のころはまだ「女子は国立大学なんかに行かなくてよい。そんなところに行くと結婚もできないぞ」という風潮が残っていました。事実私の高校の同級生は地元の国立大学と私立大学に合格したのですが、なんのためらいもなく私立の

    「お嬢様学校」

に行きました。
4つ目の「漢字を云々」というのは、申すまでもなく当時の女性は仮名文字を使うのがあたりまえだったからです。まして漢文などは使うものではありません。仮に漢詩を話題にすることがあっても、それをうまく日本風に言い換えるべきだったのです。紫式部は、清少納言が漢字を書き散らしていることを『紫式部日記』の中で批判しており、また紫自身は漢字など何も知らないふりをしていたとも同じ日記の中に書いています。
5つ目には風流ぶって古い歌などを引用してはTPOをわきまえずに和歌を送ってくることへの批判です。
これは女性について言ったものではありますが、こういうのを読んでいますと、私はとても耳が痛いのです。いいかっこして和歌を詠んだりするな、なんて言われるとドキッとします(笑)。中でも一番「ごめんなさい」という気持ちになるのは、1つ目の「中途半端な者は男女を問わず、ちょっとした知識をひけらかそうとする」という点です。長らく授業というのをしてきましたが、その多くは「ちょっとした知識をひけらか」したものでしたし、最近も、一般の方々にお話しているのはそれ以外のなにものでもない、という感じだからです。
世間の皆様すみません。

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